『ノースライト』前編ネタバレと感想│消えた家族を追え!もう俺は逃げない。だからおまえも逃げるな。

にこ

今回は、ドラマ『ノースライト』前編「消えた家族」のネタバレあらすじと感想をまとめました。

このドラマは『半落ち』、『クライマーズ・ハイ』などで知られる横山秀夫氏の同名小説を原作とする家族をテーマにしたミステリー。

 

主人公の建築士・青瀬稔(西島秀俊)は、吉野陶太(伊藤淳史)から『あなた自身が住みたい家を建ててください』と依頼され、吉野邸(Y邸)を完成させる。

 

ところが4か月後、吉野一家が引っ越していないことが判明!

 

一家はどこへ消えたのか、青瀬は失踪の謎を追う。

それではさっそく、前編のネタバレあらすじをご紹介したいと思います。

後編のあらすじはコチラ

『ノースライト』前編のネタバレあらすじ

「渡り鳥は渡らねえと死んでしまうんだ。うちらと一緒でな」

 

青瀬稔(西島秀俊)が父に言われた言葉だ。

建築士もいろんな土地を転々としながら、巣作りをするのが習性なのかもしれない。

 

2004年。

10年前にバブル経済がはじけ、大きな設計事務所を追われた青瀬は、建築士のプライドも家族も失い、惰性で暮らしていた。

 

大学の同期の岡嶋(北村一輝)が経営する小さな事務所に拾われて3年。

青瀬はようやくまた建築士として生きられる気がしていた。

 

そんな青瀬が大好きなのは、鳥。

声を聞いただけで、なんの鳥のさえずりか聞き分けられるほど詳しい。

別れた妻に、人類じゃなく『鳥類』だと思われるほどに。

Y邸

青瀬には、ある家を建てたのがきっかけで続々と依頼が舞い込んでいた。

それは、信濃追分に建てたY邸

「平成すまい200選」に取り上げられたことで、みなの目に留まったようだ。

 

ところが、そのY邸を見学に行ったお客さんによると、引き渡しから4か月経つというのに誰も住んでいないらしい。

 

そこで青瀬と岡嶋はY邸(吉野邸)を訪ねることにした。

吉野からの依頼

思えばそれは、最初から奇妙な依頼だった。

 

『信濃追分に80坪の土地があります。

資金は3000万までだせます。

青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建ててください』

 

吉野淘太(伊藤淳史)はそう依頼した。

 

そこで青瀬は、あえて北向きに家を建てて北からの光を取り入れることを提案した。

ノースライトは、とてもやわらかで物静かな光になるのだ。

 

『いいですね』

吉野夫妻はそれを聞き、顔をほころばせた。

 

古い借家に住む吉野一家には、女の子が2人と末っ子の男の子がいた。

子どもの頃の青瀬の家と同じように。

 

そこで青瀬は、ここで5人家族が暮らすことを想像しながら家を建てた。

それが青瀬の設計意欲をかきたてた。

それなのに…。

 

吉野邸に着くと、表札はおろか電気メーターも回っていない。

青瀬が電話をかけると、家の中から呼び出し音がした。

 

見ると玄関の鍵は誰かに壊され、泥棒が入ったようだ。

青瀬は警察を呼ぶ前に、家の中を確認することにした。

 

近くの森で不気味な声がして、驚く岡嶋。

『カケスだ。カラスより不吉じゃない』

『さすが鳥類だな』

 

中はカーテンが閉め切られ、電話がぽつんと床に置かれてあるだけ。

天井からは、青瀬がこだわったノースライトが柔らかく差し込んでいた。

 

カーテンを開ければ、信濃追分の景色が一望できる。

浅間山がまるで絵のようだ。

タウトの椅子

青瀬が2階にあがってみると、部屋の真ん中に椅子が置かれていた。

 

椅子に座れば、北側の大きな窓から浅間山を望むことができる。

青瀬はその特等席に腰かけてみた。

 

1967年(昭和42)年。

青瀬の父・年雄(寺脇康文)はダムを造る工事にたずさわっていた。

昔、家族で渡り歩いた飯場は、どこも不思議と北側の壁に大きな窓があった。

 

その窓から見た風景を描くのが、青瀬は好きだった。

 

引き渡しの時、吉野夫妻は『素晴らしいですね』『こんな家に住めるなんて夢みたい』と喜んでいた。

 

浅間山をバックに、家族で記念写真も撮ったというのに。

なぜあの家族はいなくなったのだろう?

ここに椅子をひとつだけ残して…。

 

そこに岡嶋がやってきて、『これってタウトの椅子じゃないのか!』と言い出す。

ブルーノ・タウトといえば、昔のドイツの建築家。

もしかしたらこれは、戦前、タウトが日本にいた時に作った椅子かもしれない。

 

それに岡嶋はどこかでこの椅子を見たことがあるような気がした。

でも思い出せず、2人は近くの蕎麦屋に向かった。

 

タウトと吉野の関係

青瀬は吉野と一緒に何度かこの蕎麦屋に来たことがあった。

そこで店主に尋ねると、吉野は3か月くらい前に長身の女性ときたという。

 

でも吉野の妻・香里江(徳永えり)は小柄で、それはおかしい。

まさか吉野は不倫でもしているのだろうか?

 

『とにかく、あの家は吉野さんのために建てたんだ。

吉野さんが住まなきゃ完成しない』

 

『それはあれか?別れた家族の代わりってことか?』

『…どういう意味だ?』

 

青瀬は自分でも気づかないうちに、吉野一家に特別な感情を抱いていた。

 

別れた妻と娘

一方、青瀬の別れた妻でインテリアプランナーのゆかり(宮沢りえ)は、能勢設計事務所を訪れていた。

ここは、かつて青瀬と同じ設計事務所で働いていた能勢琢己(青木崇高)の事務所だ。

 

ゆかりはまだ仕事上は、「青瀬ゆかり」の名前で活動していた。

 

『わざわざ離婚したことを触れ回る必要はないでしょ?』

ゆかりはさらりと言うが、男を寄せ付けないための魔除けの意味でもあるのだろうか?

 

ゆかりは青瀬に会うことはなかったが、月に1回、娘の日向子(長澤樹)は青瀬と会っていた。

でも青瀬は、吉野一家のことが気になり、ぼんやりしてしまう。

 

『大丈夫?仕事のことでも考えてるの?』

『そんなわけないよ。日向子と一緒にいるのに』

 

『昔、ママが言ってた。

”パパは目の前にいるのに、ここにはいない時がある”って。

それにパパって、”鳥類”なんでしょ?』

 

『そんなこと言ったのか』

 

『うん、パパとママがなんで離婚したのか訊いたら、パパは1つのところにはいられない渡り鳥だからって言ってたよ

 

それを聞き、青瀬は子供の頃、渡り鳥のような生活をしていたことを思い出す。

父・年雄がダム職人だったため、日本中の山を渡り歩いていたのだ。

 

『パパが建てた家、見てみたいな』

日向子の笑顔を見て、青瀬は自分の願望を見透かされたような気がした。

 

マンションまで車で送ると、『ママに伝えたいこと、ある?』と日向子。

『いや、別に』

『じゃあ、元気だったって言っておくね』

 

でも家に帰った日向子は、『いつもと同じだった』とゆかりに報告する。

 

青瀬が家に帰ると、電話がかかってきた。

電話は留守電に切り替わり、ゆかりの声が聴こえる。

 

『今日はお疲れ様でした。日向子、とても喜んでいました。来月もまた、第3土曜日でお願いします』

 

青瀬はため息をつくと、冷蔵庫からビールを取り出し、流し込んだ。

 

「…終わりってことだよね?」

青瀬は離婚話をした時のことを思い出し、やりきれない思いに駆られるのだった。

 

指にギプスをした男

それから、青瀬は仕事の合間に吉野さんを捜し始めた。

吉野さんが住んでいた町には、下町風情が色濃く残っていた。

 

人と人との近さを見るたび、子どもの頃過ごしたダムの飯場もこうだったと思う。

 

吉野さんが住んでいた家に着くと、郵便物が溢れかえっていた。

青瀬が『ごめんください』と引き戸をノックすると、隣の家の村田が顔を出した。

 

『すいません、お隣、留守ですか?』

青瀬が尋ねても、村田はなぜか『知らねぇってば。つき合いなかったんだよ』と態度が冷たい。

 

『…あの、誰かに聞かれたんですか?』

青瀬が名刺を見せると、『あんた、あの男の仲間じゃなかったのか』と村田は話に応じてくれた。

 

『あれは堅気じゃねえな』

村田によると、目つきが悪くてガタイのいい、指にギプスした男が、吉野家を訪ねてきたという。

 

吉野さんが引っ越したのは3か月前。

だいぶ前から奥さんも子どもも見かけなくなり、引っ越しの時も吉野さん1人だったという。

 

でも青瀬は11か月前に、吉野夫妻と子どもたちとあの家で会っている。

それに4か月前にY邸を引き渡した時にも、家族全員でやってきて、とても幸せそうにしていた。

 

吉野さんはなにかトラブルに巻き込まれたのだろうか?

青瀬の建てたあの家が、あの家族を壊してしまったのだろうか…?

 

青瀬が責任を感じていると、岡嶋がタウト関連の本を持ってきた。

 

あの、2階にぽつんと残されていた椅子。

岡嶋はあの椅子が妙に気になってしょうがないというのだ。

 

もしあの椅子が本当にタウトの椅子なら、吉野さんを捜す手がかりになるかもしれない。

そこで青瀬は、高崎にある少林山達磨寺を訪ねた。

 

ブルーノ・タウト

第2次世界大戦前夜、ドイツの建築家 ブルーノ・タウトはヒトラー率いるナチの弾圧から逃れるように日本に亡命した。

 

タウトが伴侶のエリカと共に2年余り暮らした家が、今もここに残されているのだ。

 

そこには、「我 日本文化を愛す」とドイツ語で書かれたタウトの掛け軸が飾られていた。

 

ここで青瀬は、地元の関東日報で記者をしている池園(池田鉄洋)と知り合う。

 

中に入り、タウトの椅子を見せてもらう青瀬。

でもここには、同じような椅子はなかった。

 

タウトは在日中、日本人に工芸を教えていて、弟子を指導するためのデッサンや設計図が何枚も残っていた。

乱暴な話、それを真似て作れば、誰が作ってもタウトの椅子と言えてしまう。

 

でも本物の椅子の裏には、「タウト井上印」があるという。

そこで青瀬は急いでY邸に行き、椅子の裏を確認した。

 

しかしタウトの印は、どこにもなかった…。

 

その時、Y邸の固定電話が鳴り、誰かが電話の留守録を聞こうとしていた。

 

『もしもし、吉野さんですか?…青瀬です』

青瀬は出て無事を確認しようとするが、聞こえるのは風の音ばかり。

そのまま電話はすぐに切れてしまった。

 

父として…

翌日、青瀬が寝ていると、岡嶋が訪ねてきた。

 

『吉野さんが生きていたみたいでよかったじゃないか』

『…確証は持てないがな』

 

2人は昼間から、缶ビールを飲んだ。

 

青瀬は池園から話を聞き、タウトに興味を持った。

 

日本文化を愛していたタウトは、死んだら少林山に骨を埋めてほしいと言っていた。

けれどもその願いは叶わず、伴侶のエリカが海を渡ってデスマスクを届けにきた。

 

生まれ故郷のドイツではなく、トルコで亡くなったというタウト。

彼に故郷はなかったが、その代わりいつも隣にはエリカがいた。

 

でも戸籍上は、エリカは妻ではなく、タウトは亡命するとき、ドイツに妻子を残してきている。

 

だけど『あの2人は不倫じゃない、同心梅(どうしんばい)だ』と岡嶋は言う。

 

『同じ心を持つ、2つの体。

世の中にはいるんだよ。

こう、結婚とか離婚とか関係なく、心がシンクロする相手が』

 

『離婚は関係あるだろ?』

 

『別れてからシンクロすることだってあるさ。まだ諦めなくてもいいんじゃないか?』

 

大手の事務所を辞めてくすぶっていた青瀬が、あのY邸を建てることができたんだから。

家族だってまだどうにかなるかもしれない。

 

だがもう終わったことだと、青瀬は逃げる。

それに、岡嶋には事務の津村マユミ(田中みな実)と不倫しているという噂があるのだ。

それが本当なら、そちらのほうが問題だ。

 

『あいつは同心梅だ。小さい頃から知ってる。兄弟、家族に近い』

 

『…じゃあ、お前が死んだらどこに帰る?』

『あ?』

『…あ~、気にするな』

 

青瀬が首を振ると、岡嶋はやっと本題に入った。

市が予定している藤宮春子メモワール。

その指名業者の一社に岡嶋設計事務所が入り、コンペに参加することになったのだ。

 

これは事務所にとって大きなチャンス。

そのために、岡嶋は無理をして指名権を勝ち取ったという。

 

『だからどうしても勝ちたい。

そのために、力を貸してくれないか?』

『もちろんだ』

 

『…言いにくいんだが、あくまで俺に力を貸してほしいんだ。

俺の案がダメな時は、お前の案を取り込んで俺の作品ということにしてほしい』

 

岡嶋は、1つだけでいい。青瀬のY邸のような、世に遺るものが作りたかった。

自分で作った、自分の魂が宿った、死ぬ間際に魂が帰る場所。

 

岡嶋は、小学生の一創に『俺が建てたんだ』と誇れるものをつくりたかった。

それぐらいの年が、1番父親の姿が鮮明に残る時期ではないだろうか?

 

『一生に一度でいい。そういうものをつくりたいんだよ』

 

それを聞き、青瀬の脳裏に幼い頃の記憶が色鮮やかに甦った。

『ダムの子』と言われていじめられたりもしたけど、天にそびえたつような大きなダムを造る父ちゃんのことを、青瀬は尊敬していた。

 

『稔よぉ、ダムはな、神様の手みたいなもんよ。

山に降った雨も雪も、1滴残らず集めて貯めて、みんなに大盤振る舞いするんだ』

 

青瀬を肩車して、滝のように水を放出するダムを見せる年雄。

 

岡嶋のいうとおり、今も父の言葉が、姿が青瀬の目に、耳に残っている。

そこで青瀬は、岡嶋に協力することにした。

 

日向子にY邸を見せる青瀬

藤宮春子は、絵葉書を路上で売って生計を立てていた、パリ在住の孤高の画家だ。

70年の生涯を閉じるまで、下町の労働者や子供たちを描き続けたが、この優れた作品たちが人の目に触れることはなかった。

 

この人にふさわしい記念美術館を作る。

それが今回のコンペだ。

 

岡嶋が集めてきた資料や作品の中に、藤宮春子が残した詩があった。

 

埋めること

 

足りないものを埋めること

 

埋めても 埋めても足りないものを

 

ただ ひたすら埋めること

 

 

『これこそ、創り、遺すってことだろ?』

岡嶋の言葉に心動かされた青瀬は、娘の日向子に「平成すまい200選」に選ばれたY邸を見せた。

 

『わ~、これをパパが作ったの?』

日向子はわくわくした表情で写真を覗き込んだ。

 

『ママに見せたらきっと気に入ると思うよ。

いつも言ってるもん、「地べたに住みたいよ」って』

 

ずっとマンション暮らしのゆかりと青瀬だったが、1度家を建てようとしたことがあった。

 

でもその時、青瀬は鉄やコンクリートの建物を造ることに夢中で、木の家を建てたいというゆかりと意見が合わなかった。

 

やがてバブルが弾け、大手事務所を追われた青瀬は酒に溺れた。

 

そしてついに、ゆかりの方から離婚届を差し出された。

 

『家を建てなくてよかったな』

 

『…それって、終わりってことだよね?』

 

あの頃、まだ日向子は小学生だった。

今は高校生になった日向子。

そして話題は、青瀬が昔飼っていた九官鳥の話になった。

九官鳥の九太郎

転校ばかりしていた青瀬は友達ができず、山で鳥のさえずりを覚えたりして、いつの間にか鳥が大好きになっていた。

 

ある日、青瀬は野鳥を拾い、家に連れて帰った。

でも『渡り鳥は渡らねえと死んじまうんだ。だから返してやれ』と言われ、代わりに父が九官鳥を買ってきてくれた。

 

九官鳥はあっという間に言葉を覚え、

『オ~イ、アオセミノルク~ン』と話すようになった。

 

『でもその九官鳥のせいで、…いや、パパのせいで、おじいちゃんは死んでしまった。

高校生になって家を出た後に九官鳥が逃げて、おじいちゃんはパパのためにそれを捜しにいって…』

 

崖から落ちて亡くなってしまったのだ。

 

『パパはいつも肝心な時に、大事な人のそばにいないんだ』

『でも、ママが住みたい家は建てられたじゃない』

日向子はそう言うと、この家には今、どんな人が住んでるのかなと呟いた。

 

『吉野さんっていう人だよ』

青瀬が答えると、前に何度もゆかりに電話をかけてきた男性の名前も”吉野さん”だという。

 

はたしてそれは偶然なのだろうか?

 

ライバルたち

後日、青瀬と岡嶋はメモワールの建設予定地に向かった。

 

そこにはかつて青瀬と一緒に働いていた同僚・能勢と、能勢がヘッドハンティングした鳩山(竹財輝之助)がいた。

岡嶋事務所にとっては、強力なライバルだ。

 

そこで青瀬は、ゆかりがインテリアプランナーとして、能勢のチームに参加していることを知る。

それにゆかりが、平成すまい200選でY邸を見たことも。

ゆかりは今も青瀬の仕事を気にかけてくれているのだ。

 

ゆかりに会いに行く青瀬

出典:『ノースライト』公式ホームページ

その夜、青瀬はゆかりを訪ねた。

するとゆかりは、日向子と一緒にすまい200選を見たという。

日向子は前からY邸を知っていたのに、初めて見たふりをしたのだ。

 

『嬉しかったのよ。あなたの大事なものを見られたような気がして。

子どもにとって家は、親の存在そのものってところがあるから』

 

でもゆかりがY邸を知っているなら、何度も家に電話をかけてきたのは吉野さんかもしれない。

 

…君は、吉野さんのことも知っているんじゃないか?Y邸の吉野さんだよ

『どうして?住んでる人のことまで知らないわよ』

 

青瀬は、帰っていくゆかりの後ろ姿を見送りながら、吉野が一緒にいたという背の高い女性のことを思い出す。

もしそれがゆかりだったら…?

 

市長と癒着!?

そんな中、青瀬は岡嶋と一緒に、東洋新聞の繁田という記者に会う。

繁田は2年前まで本社で警視庁を担当していて、反市長勢力とつながっていた。

 

要件は、岡嶋が藤宮メモワールのコンペの指名権を取るために、市の門倉建設部長と何度も飲食し、賄賂を贈ったのではないかということ。

 

でも岡嶋は、飲食代は折半しているし、別にコンペの審査員だからではなく、プライベートで会ったと否定する。

 

だが繁田は、岡嶋が門倉部長と市長と3人でサッカー観戦に出かけたことも突き止めていた。

 

それに岡嶋は、門倉部長をタクシーで送り届けたとき、タクシー代を事務所に請求するよう、運転手に名刺を渡していたのだ。

 

繁田たちは最後に、警察もこの件に関心を持っていると言い残し、去っていった。

 

『何言ってるんだよ』と岡嶋は笑ってみせるが、動揺しているのは明白だった。

 

吉野とタウトの椅子

その時、青瀬の携帯が鳴り、タウトの記念館で会った記者・池園から『あの椅子によく似た椅子が見つかった』と連絡が入った。

 

椅子は、タウトが工事監理をした熱海の蕎麦屋にあるという。

青瀬と池園は一緒に蕎麦屋に行き、実際に座り、目を閉じた。

するとY邸で見た、浅間山を臨む光景が思い浮かんだ。

 

青瀬が『吉野淘太』について尋ねると、前に1度この店に椅子を見に来たという。

吉野の名前は「トウタ」で、逆から読んだら「タウト」。

それで女将さんはよく覚えていた。

 

なんでも 吉野は仙台がルーツで、自分もタウトの椅子の設計図を持っていると言っていたらしい。

 

もう逃げない

その夜、岡嶋が泥酔して青瀬の家を訪ねてきた。

明日の朝刊に記事が出るというのだ。

 

『繁田が市議会の革新系の議員を動かしたんだよ。

反市長派の保守系主義も相乗りした。

明日にも市長と業者の癒着を追及するための百条委員会ができる。

それが繁田の常とう手段らしい』

 

岡嶋が門倉部長のタクシー代を出したのは事実だった。

食事代も1度出した。

 

青瀬に責められ、岡嶋は床に座り込み、笑い出した。

『コンペは降りるよ』

 

『なんでだ!お前、昔と何も変わってないのか?』

昔の岡嶋は野心家でちゃらんぽらんなところがあった。

でも3年前に会った岡嶋は、別人のように変わっていた。

だから青瀬は岡嶋を信じてついてきたのに。

 

『お前もだよ…お前もちっとも変わらないよ。信じてついてきたとか言って、人を見下してる』

『そんなことないよ』

『あるよ!』

 

岡嶋は怒鳴ると、青瀬は鳥みたいに人を上から見下ろすだけで、ひとの気持ちを想像することもできないと言う。

だから自信を失ったときに、簡単に家族を捨てられたのだと。

 

『じゃあ、お前は家族を大事にできてるのか?』

『俺は家族を騙してるよ!でもお前みたいに逃げてないよ!』

 

そう言うと、岡嶋は何度も小声で謝った。

だって岡嶋はそういう青瀬が嫌いじゃない。

そういう青瀬に、褒めてもらえるような建築家になりたかった。

だけどそれももう終わり。

 

『何が終わりだ。今度のコンペがなくなるだけだろ?

百条委に呼ばれたら、やったことはやった、やってないことはきっぱり否定すればいい。

お前はなんにも終わってない』

 

青瀬は岡嶋の肩をがっしり掴み、励ました。

 

『まさかずっと逃げつづけてきたお前に励まされるとはな…』

 

それを聞き、青瀬は自分の話を始めた。

『これは俺の勝手な想像だけど、蕎麦屋で吉野さんと一緒にいた背の高い女っていうのは、ゆかりじゃないかと思うんだ』

 

『…え?なんのために?』

『わからないよ。ただの勘だ。でもこの勘を無視しちゃいけないような気がするんだ。最初から何かが始まってたんだよ!』

 

吉野が「あなた自身が住みたい家を建ててください」と依頼してきたこと。

 

でもその家には誰も住んでおらず、タウトの椅子だけが残されていたこと。

 

吉野の名前「トウタ」は逆から読んだら「タウト」であること。

 

ゆかりに何度も電話をかけてきた男の名前も、吉野だったこと。

 

 

 

「…それって終わりってことだよね?」

 

離婚するとき、ゆかりが告げた言葉。

 

 

『岡嶋、おまえの言うとおりだ。

俺は人の、…家族の気持ちを考えてこなかったのかもしれない。

だけどもう俺はそこから逃げたくない。

だからおまえも逃げるな。また一緒に立て直そう!』

 

青瀬が岡嶋の肩をつかむと、岡嶋は涙を浮かべてうなずき、青瀬の肩をつかみ返した。

 

朝刊

そして朝がきた。

新聞を見る岡嶋。

どの新聞にも、市長と設計業者が癒着か、という見出しが躍っていた。

 

そんな中、岡嶋は自分が描いた建物のデザインを見ていた。

 

すると登校前に、一創が『それ、見てもいい?』と話しかけてきた。

『ごめん、まだ未完成なんだよ』

岡嶋が断ると、

『お父さんは絵を描くの好き?』と、一創。

 

岡嶋は、一創と同じくらいの時、隣の席の子が絵が上手で、それが羨ましくてこっそり真似していたことを明かす。

 

『僕も絵を描くことが好きだよ。あんまりうまくないけど』

『そうか!じゃあ、もっともっと描け。そしたらうまくなるぞ、お父さんみたいに』

 

岡嶋が頭をなでると、

『いつかそれ、見せてね!』と一創は笑顔で学校に行った。

 

そんな2人を見つめる妻・八栄子(田中麗奈)

彼女は新聞を読んだらしいが、口に出すことはなかった。

 

だがその時、岡嶋が急に腹を押さえて苦しみだす。

 

青瀬は、岡嶋が倒れたことを知り、車を走らせた!

 

 

 

…俺はどこに向かっているのか?

 

ただ霞のように だがはっきりと、あのノースライトだけが見えていた。

 

 

~後編につづく~

 

 

『ノースライト』前編の感想

鳥類のような青瀬。

時折、差し込まれる鳥の映像、さえずり。

Y邸から見える、青緑のまるで合成のような景色(でもこれは本物だそうです!)。

静かに、深いところから聞こえてくるような音楽も相まって、ずっと心のどこかに触れられているような、そんな感覚で見ていました。

 

離婚届を差し出したのは、ゆかりからみたいでしたが、

『これで終わりってことだよね?』という言葉から察するに、本当に離婚する気はなかったのかも。

青瀬の気持ちを確かめたかっただけかもしれませんね。

 

今もまだ青瀬はゆかりのことを想っているようですし、ゆかりも仕事上の名前は青瀬のまま。

傍から見てると、うぉ~という感じです。

 

岡嶋は岡嶋で『俺は家族を騙している』って言ってたし。

あれはやっぱり浮気してるってことなのかなぁ。

 

一創くんがめちゃめちゃかわいくて、お父さんのことが大好きで。

一創くんなりに、お父さんのことを知ろうとしている姿がけなげで。

 

それなのに、息子になにか遺してやりたいという岡嶋の想いが、賄賂という形に繋がってしまうなんて辛い。。

 

消えてしまった吉野さん一家の謎を追う話ですが、家族の話のほうが色濃く、そちらのほうが気になります。

 

とりあえず、岡嶋さんの具合が心配ですね~!

 

それではここまで読んでくださり、ありがとうございました\(^o^)/

またの~。

 

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