『今夜はコの字で』1話ネタバレと感想│美味しいお酒にみんなの笑顔。こんな時代だからこそ、雰囲気だけでも味わいたい！

コミュ力抜群の恵子

カウンター席はお客さん同士の距離が近く、恵子が雑誌に載っていることを知ると、斜め前のお客さんが刺身の盛り合わせをごちそうしてくれた。

『彼氏さんと食べな』

『違いますよ～。彼氏はちゃんといるんで』

 

先輩、彼氏いるのか～。。

吉岡は少しがっかりしつつも、『お知り合いですか？』と尋ねた。

『ううん、初めて会った人！』

 

恵子のコミュニケーション能力の高さに、吉岡はびっくり！

お酒が来る前に食べ始める吉岡を見て、

『ったく相変わらずヘタレやな～』

と、恵子はたしなめる。

 

『恵子先輩も変わらず、、』

『変わらず、何？ 気になるな～』

『お綺麗で』

すると恵子は関西弁になり、『照れるや～ん！』と吉岡の背中をバシーン！

 

関西出身の恵子は、酔うとこうしてときどき関西弁になるのだ。

 

そこに昔ながらの大ジョッキに入ったビールがきた。

でかい！！！

 

『乾杯～！』

 

それから2人は、さっきもらった刺身にわさびをちょっとのせ、醬油をつけていただいた。

 

『ウマっ』

『う～ん、最高～！』

 

この店の名物、鯖の燻製も最高だ♪

 

上機嫌の恵子は近くの客たちと、乾杯～！

めちゃめちゃ酒場に溶け込んでいる。

 

こういうカウンター席の店で飲んだことがなかった吉岡だが、話しやすいというか、いつしか居心地がいいと思うように…。

 

『平成生まれのキミにもわかる？』

『はい。サイアクな後輩のせいでイライラしてたけど、ちょっと和みました。

今の若い奴って何考えてるのかわからないっていうか…』

 

吉岡が愚痴ると、

『ちゃんと話したことある？ 仕事じゃなく、飲みに行ったり』

と恵子は真面目な顔。

 

言われてみれば、吉岡は山田と仕事以外に話すことはないし、誘う気にもなれない。

それに行くとしても、タッチパネルで注文する居酒屋ばかり。

 

それを知った恵子は

『あかーん！今のキミに必要なのは、そういう店じゃない！』

と吉岡にある居酒屋を紹介する。

 

ムカムカ

翌日。

吉岡が企画書を全部やっておいたことを山田に伝えると、

『そっか〜。俺の仕事なくなっちゃったな〜』

と山田は鼻歌でも歌いそうな勢いでコーヒーを買いに行ってしまった。

 

そんな山田の態度に、

なに〜！？そこはまず、お礼だろ！？

と、吉岡は腹が立ってしょうがない。

 

そこで吉岡はさっそく、会社の帰りに恵子に紹介された店に寄ってみることにした。

 

居酒屋「だるま」

俺に必要な店ってどんなところだろう…？

 

たどり着いたのは、清澄白河にある居酒屋「だるま」。

昭和な店構えが印象的だ。

 

外からのぞくと、中には常連客がいっぱい！

チェーン店が行きつけの吉岡は思わず尻込みしてしまう。

すると後ろから来た常連客・佃島に『入んないのかよ』とせっつかれ…。

吉岡は彼の後に続いて入ることに。

 

恐る恐るのれんをくぐり、空いている席に腰かける。

ワイワイがやがや。

とりあえず生ビールを頼むが、やっぱり直接注文するのは緊張する〜。

でもやっぱり、仕事の後の生はうまい！

 

料理は何を頼もうかと、壁に貼られたお品書きを見ていると、

『ここの天ぷら、なかなかいけるよ』

と隣りに座っていた常連の月島が勝手にキスの天ぷらを頼んでしまう！

お、おごりなのか？？

 

吉岡が動揺しながらも追加でマグロ納豆を頼むと、

『なかなかいい選択だ』

と月島はニヤリ。

うーん、めちゃくちゃ話しかけてくる！

 

するとさっき一緒に店に入った強面の佃島が、

『注文くらい自由にさせてやれ』

と向かい側からいちゃもんをつけてきた。

それに月島が応戦！

 

けんかが始まったのかとヒヤヒヤする吉岡だったが、どうやらいつものことらしい。

 

そうこうするうち、女将さんがアツアツ揚げたてのキスの天ぷらを持ってきてくれた。

ナスと大葉の天ぷらまでついている。

これは嬉しい！

 

口に入れると、衣はサクサク。キスの身がホロホロほぐれ、思わず『うま〜！』

その様子を見て、隣の月島も満足そうだ。

 

月島によると、マグロ納豆はよく混ぜてから、ちょいと醤油をたらして食べるのがうまいらしい。

 

言われたとおりかき混ぜていると、昼間の山田の態度を思い出し、吉岡はムキ〜ッ。

そんな吉岡を見て、『なにか話したいことがあるなら、言ってみな』と月島が声をかけてくれた。

 

吉岡が山田のことを話すと、月島はうんうんと頷きながら聞いてくれた。

 

『上司と後輩の間に挟まれて、大変だなぁ。

でもその後輩も、兄さんみたいに成長する日がくるんじゃねぇの〜？』

 

優しく月島にそう言われて、吉岡はなんだか泣きたくなった。

話を聞いてもらっただけで、こんなに心が軽くなるなんて…。

 

『そういえば俺も、新人だった頃はダメダメで、生意気だったかも…』

 

そう思いながら、マグロ納豆を口に入れると『ウマッ！！！』

『だろ〜！？』

 

愚痴を聞いてもらえなかったら、うまさが半減していたかもしれない。

 

すると月島と佃島が争うように、『焼きうどんもうまいぞ』『ハムカツも食え』と次々に注文を始めた。

 

そしてついに

『そんなに気前いいなら、2人がみんなのぶんも払う？』

と女将さんに言われ、店内は大爆笑！

 

吉岡はお腹も心も満たされ、大満足で店を後にするのだった。

 

コの字酒場の魅力

外に出るとさっそく吉岡は恵子にメールを送った。

 

 

するとすぐに恵子から電話がかかってきた。

『だるま、よかったでしょ〜』

 

『この店が俺に必要って、先輩が言っていた理由がわかりました！』

 

常連さんと話していたら、吉岡は今まで「ちゃんと人と向き合って話をしていなかった」ということがわかったのだ。

 

吉岡がお礼を言うと、受話器の向こうで恵子は嬉しそうに目を細めた。

 

『チェーン店もいいけど、ああいう店もいいでしょ？

だるまみたいなカウンターのある店を、私は“コの字酒場”って呼んでいるの』

 

そういえば、この前行った「田や」もそうだった。

 

コの字のカウンターは、

左右も前も、お客もお店の人もみーんなフラットに話せて、いろんな出会いがある。

 

今度、山田も誘ってみようかな？

 

『先輩！コの字酒場にハマりそうです！』

 

吉岡は来たときとは別人のように軽い足取りで、夜の街を歩き出すのだった。

 

 

──2話につづく──